【美術館めぐり】東京都美術館のクリムト展に行ってきました。過去最多の油彩画25点でクリムトを満喫。
クリムトとしては日本で過去最多となる、油彩画25点以上が展示された、「クリムト展 ウィーンと日本 1900」。ずっと観たいと思っていた、グスタフ・クリムトの絵に、やっと対面することができました! 美術館併設カフェのコラボメニューもご紹介します。
いつか絶対に観たかった、グスタフ・クリムト
クリムトの絵画『アデーレ・ブロッホ=バウアーの肖像 I』を題材にした、『黄金のアデーレ 名画の帰還』という映画を観て以来、 いつかは絶対に観たいと思っていたグスタフ・クリムトの絵。その夢が、ついに叶う日がやってきました。それが、上野の東京都美術館で2019年4月23日から7月10日まで、平成から令和にかけて開催されている、「クリムト展 ウィーンと日本 1900」です。
ゴールデンウィークの東京は空いているという例年のチャンスを活かし、連休初日に上野へ向かいます。予想通り、入場の待ち時間は、なんと0分! 都内の美術展の混雑を避けたいのならば、ゴールデンウィークは本当にお勧めです。
(※国立新美術館では2019年4月24日から8月5日まで、19世紀末ウィーンの芸術を総合的に展示した「ウィーン・モダン クリムト、シーレ 世紀末への道」が開催されています。そちらにもクリムトの作品が展示されていますので、興味のある方は併せての鑑賞をおすすめします。)
全8章からなる展示は見どころ満載
展示は、6歳とは思えない大人びた横顔が魅力的な『ヘレーネ・クリムトの肖像』を含む、第1章「クリムトとその家族」からスタート。第2章「修行時代と劇場装飾」、第3章「私生活」と続き、第4章は「ウィーンと日本」。最近の美術展は、こうした日本の影響を考察するコーナーが必ずある感じですね。そして一番のクライマックスといえるのが、第5章の「ウィーン分離派」。ここに展示されている『ユディトⅠ』『ヌーダ・ヴェリタス(裸の真実)』は、とにかく圧巻です。大きな部屋にゆったりと飾られた、この2枚の絵は、背筋がゾクゾクするような、得体の知れない強烈な魅力を放っています。
平面的で幾何学的な黄金の中に、色彩もタッチも全然違う別の世界のユディトが、溶け込むことなく同時に存在しているような『ユディトⅠ』。異質なものの組み合わせが生み出す不安感と神秘性に、強く引き込まれます。鏡を持って真っ直ぐに正面を向いた裸体と、背景の青、上下の黄金に書かれた文字という、これもまた相容れないものがひとつの絵として存在している『ヌーダ・ヴェリタス(裸の真実)』も、その異様さに圧倒されます。
ちなみに、この2点は説明文が絵とは別の壁面に展示されていて、混雑を分散する配慮がされていました。絵を観る人と説明文を読む人で押し合いへし合いになるのは、よくある光景なので、これはなかなかいいアイデアだと思います。
そして、その先にあるのが、幅34メートルの壁画を原寸大で精巧に複製した『ベートーヴェン・フリーズ』。複製とはいえ、そのデザインの独自性は存分に堪能できます。どこから思い付いたのかわからない不思議な世界観は、これもまた観飽きることのないオリジナリティに溢れています。
第6章は、突如の「風景画」。クリムトに風景画のイメージなんてなかったから、描いていたのは意外です。
そして、第7章の「肖像画」の次が、最後の第8章「生命の円環」です。ここでの見どころは、ウィーン大学の大講堂のために制作した『医学』『哲学』『法学』の3枚の天井装飾画。といっても、展示されているのは、その写真と下絵(習作)です。何故ならば、クリムトの絵は大学の求めたものと違うと抗議を受け、クリムトは制作の契約を破棄。クリムトによって買い戻された絵は、個人コレクターなどに渡ったものの、最終的にはナチスによって3点とも消失させられてしまったからです。つまり、現物はもうこの世に存在していないのです。
あぁ、なんて残念なんでしょう。残された写真と下絵からでも、その素晴らしさは存分に伝わってきます。これは絶対に残しておくべき作品だったはずです。ちなみに、冒頭で紹介した『アデーレ・ブロッホ=バウアーの肖像 I』も、ナチスによって本来の持ち主から不当に押収されたという歴史を持っています。
クリムトの絵の感想。違和感が一番の魅力。
さて、存分に堪能したクリムトの絵ですが、一番強く感じたのは、ひとつの絵の中に、混じり合わない異質なものが混在する違和感の魅力です。眩く光る平面的で幾何学的な金箔と、暗くぼんやりとした人物が、全く混じり合うことなくひとつのキャンバスに描かれている違和感。全体を大きな塊として輪郭を描いた髪の毛に見られるように、まるで絵を切り抜いてコラージュしたような、複数の空間が同一画面に存在する違和感。こうした違和感に、しかも、100年前に描かれたとは思えない、非常に現代的に感じるデザインで描かれているということに、得体の知れないものを観る興奮を呼び起こされます。控えめに言って、クリムト、最高です。
あー、やっぱり観て良かった! 絶対観ておくべきです!
お土産に買ったピンバッジは、クオリティが高くて嬉しい
美術展鑑賞の際の、我が家のお土産の定番はピンバッジ。最近は、平らな金属の表面に印刷されただけの、安っぽい作りのピンバッジが多いのが残念です。しかしこのクリムト展のピンバッジは、立体的のある金属の凹面に七宝を流し込んで作られたと思われる、立派なもの。お値段は500円とちょっとお高めですが、安くても残念なピンバッジより、満足感は、はるかに高いです。これは、『ベートーヴェン・フリーズ』の左右の上空を連なって浮遊している、精霊たちのピンバッジ。極端な横長形状故に、真ん中ひとつでは傾いてしまうためでしょう。裏には左右の2箇所にキャッチが付いています。2つも付いているなんて、ちょっと豪華な気分ですねw
なお、ピンバッジはグッズコーナーではなくて、出口近くでカプセルトイとして販売されています。カプセルトイだから何が出るかはわからないけれど、複数回買って同じものがダブった人が、同じくダブった人と交換しようと待っていたりするケースが多いのでご安心を。もし自分がダブった場合も、「あー、同じのが出ちゃったー」と言っている人に交換を持ち掛けてみると、お互い幸せになれると思います。
こちらは、クリムト展とのコラボメニュー、「自家製ブラバンターシュニッテン カシスシャーベットを添えて」。平らに焼いたシュー生地の間にカスタードクリームと、アクセントのブルーベリージャムを挟んだ、クリムトの故郷ウィーンのデザートだそうです。噛みごたえのあるシュー生地は甘くなく、あっさりと食べられます。
こちらは「自家製プリン」。流行りのとろける系とは違う、しっかりとした食感が懐かしい美味しさです。
上野の老舗、あんみつ「みはし」のあんこを使った「上野パフェ」。ボリュームたっぷりです。
最近の美術展は、こうした近隣の飲食店とのコラボメニューがあるのも、楽しみのひとつですね。
最近の美術展は、こうした近隣の飲食店とのコラボメニューがあるのも、楽しみのひとつですね。
というわけで、眼も心もお腹も満足した、平成最後のGW初日でした。
(おしまい)
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